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2016年10月16日(日)  【将棋】将棋界始まって以来の衝撃
過去10年どころか将棋の歴史が始まって以来の衝撃が、今週、将棋界を走った。ある将棋プロが公式対局において将棋ソフトを利用しているのではないか、という疑惑である。

以前述べたように、将棋ソフトの実力(棋力)は年々向上しており、既に数年前にプロが真剣に挑んでも、将棋ソフトに勝つことは困難であることが実証されている。その後もソフトの棋力は上がり続けているので、プロが一発勝つことはあっても、数回以上戦えばソフトに軍配が上がることはほぼ間違いない。

ここまで将棋ソフトが強くなると、プロの事前研究においても欠かせないものとなり、事前研究で将棋ソフトが提示した手筋を実際の公式対局でプロが採用することも珍しくない。ただしこれはあくまで事前研究の話である。公式対局の中途においてプロがソフトや人に頼ることはルール違反以前の問題である。

各種のニュースによると、今回の疑惑は、ある将棋プロが公式対局中、中盤から終盤の勝負所の頭をフル回転させねばならない局面で、都度対局室を抜け出しており、しかも指し手が不自然であるということであったことが端緒とのことである。そうしたことの真偽は私のような素人には分かるべくも無いので、それには触れない。

素人として一つ言えることは、素人は何を持って楽しみとするか、である。ボードゲームにせよスポーツにせよ、「実力問わず自分がやる楽しみ」もあれば「プロの試合を見る楽しみ」もある。プロの試合において期待されるのは人間同士の生の戦い、時には精神的・肉体的な限界に挑戦するその姿である。科学的な根拠に基づいてトレーニングを行ったり摂取物(合法な)を考えたりすることはあっても、試合や大会自体はプロ自身が行うものである。

将棋の場合、そうした限界において苦闘する姿や指し手が驚きや感動を観客に与えてくれる。例えば羽生さんの場合、渡辺さんとの王座戦だったと思うが終盤の白熱した局面で銀のタダ捨ての妙手が出てきた。豊島さんとの棋聖戦だったと思うが、一度打った歩を成り捨てる棋理の上では意味が無いどころかマイナスな手も出てきた。どちらも羽生さんがその場面場面で限界まで考えて出てきた手である。我々素人はそうした姿を自分の脳裏に焼き付けるのであり、また対価を支払うのである。

公式対局の中途でソフトに頼ることが横行すれば、このような驚きや感動は無くなるし、それに対価を払う人はいなくなるだろう。プロの世界が続くためにも、このような疑惑が起こらないことを望むばかりである。
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